こんにちは。一日中「ポメラ」触ってます。
前回のブログの続きの話です。
おじいさん、おばあさんにハマるものは、
「目で見て面白い・昔のもの・下ネタ」
という情報を手に入れた僕は、祭り二日前にして頭をフル回転させました。
①「目で見て面白い」→「視界から入る情報だけで面白い」→「言葉はいらない」→「パントマイム」→大道芸。
まず大道芸を取り入れることを決めました。
②「昔のもの」→「歴史のあるもの」→「中国四千年の歴史」→中国人。
このあたりから僕の思考は音をたてて壊れていきます。
③「下ネタ」→チンチン。
僕は考えることを辞めました。
こうして「目で見て面白い・昔のもの・下ネタ」全てを取り入れた結果、
【中国から来た大道芸人”沈沈”】という恐ろしいキャラが生まれます。
もちろん沈沈は中国語を話すこともできなければ大道芸もできません。そんな沈沈を生んだ恐怖を忘れようと僕はすぐにベットに入るのでした。
祭り当日、僕は腹をくくります。
フリップ芸で5分、残りの10分は沈沈に任せようと。
沈沈の衣装などは家にあるものを見繕い、使えそうな小道具をキャリーバックに詰めました。
学校が終わってから祭りがあるらしいので僕はひとまず通学しました。授業中も僕の頭の中は「沈沈」の事でいっぱいです。友達には言ってませんでした。友達もまさかクラスメイトが放課後、介護施設で中国人になるとは思ってもないでしょう。
学校を終えた僕は家に急いで帰り、キャリーバック片手に介護施設に向かいます。
僕は現場に着きビックリしました。
大きな駐車場のど真ん中に畳?のような物が二つ。その手前にお客さんが30、40人。出店のようなものは無いに等しく皆さん飽き飽きしている雰囲気でした。
「あ!余興の子だよね!こっちこっち!」
その声のするほうを向くと手招きをしている職員の方がいました。
職「待ってたよ!!!お笑い芸人目指してるんだって!!!?」
僕「あ、はい。・・一応。」
職「僕が司会みたいな事してるからよろしくね!!!さっそくいける!?」
僕「え?もうですか?」
職「大丈夫!!僕に任せて!!じゃあ数分後に始めるよ!!!」
声の大きさが異常な職員さんとの会話は筒抜けで、
「はやく~」
「まちくたびれた~」
などのヤジが飛ぶ中、僕は準備をし職員さんに伝えました。
僕「・・できました。」
職員の方は「安心して」と言わんばかりの笑顔で、マイクを口に近づけ、
職「お待たせしました!なんと近くの高校からある生徒が来てくれています!将来の夢はお笑い芸人だそうです!それでは皆さん、未来のスーパースターに拍手を!!!」
殺意を覚えた未来のスーパースターは、まばらな拍手をもらいながらステージに上がります。
緊張のしすぎでヘラヘラしながら自己紹介をしている写真。
さあ、ここからが勝負です。
最初の5分はフリップ芸。「こんな介護施設はイヤだ」という鉄板ネタで確実に笑いを獲ってやろうと僕はフリップを手に取ります。
(笑いすぎで呼吸困難にならへんようにな!!!)
鬼スベりました。
向こうの方にいる女性職員の上司の悪口トークのほうが盛り上がっていました。
スベりすぎている時に追い打ちをかけるようにノドの渇いた女性職員が後ろのジュースを取りに行く写真。
フリップ芸が終わった時、会場に流れている空気は「え?これが余興?」「本当に芸人目指しているの?」「普通に飽きた!」という空気でした。
もう、失うものはない。
後はあの方に託すしかない。
頑張れ!沈沈!
僕は急いで袖?に行き準備をしました。
全ての準備を見れる開放的な袖の写真。
マイクを職員さんから受け取り自分で自分(沈沈)の煽りを行いました。
「皆さん!今回はスペシャルゲストが来てくださっています!なんと海を越えて中国から!全ての達人、全てを極めし達人、その名も“沈沈”~~~!」(大体の内容)
少林少女のBGMが流れる中「中国から来た大道芸人”沈沈”」が静岡の小さな介護施設に現れます。
「沈沈、緊張でガチガチになっちゃた!沈沈、ガチガチ~!」という職員ドン引き下ネタつかみがスベり、早くも母国に帰りたくなっている中国人の写真。
そこから「リンゴを片手で壊す!」と豪語し、椎名林檎さんのCDを片手で破壊する大道芸。
「椅子を3つ重ねた上に乗る!」と豪語し、パイプ椅子を3つ畳んだ状態で重ね上に乗る大道芸。
以上の2つを行いました。もはや中国人の設定など忘れているであろうお客さんは「怒り」さえ覚え始めていたでしょう。
思えば僕は昔から歌うことが好きでした。
僕はマイクを手に取り言いました。
「では・・最後に坂本九さんの「上を向いて歩こう」を歌いたいと思います。」
期待か、同情か、拍手が自然と起こります。
「棒アルヨ!」
僕の頭の中の沈沈が突然叫びました。確かに何故かステージの横には「棒」がありました。
「恩師イルヨ!」
僕はビックリしました。お客さんの中に確かに中学生の時、お世話になった菊池先生がいるのです。
「歌、棒、恩師、モウワカッテンダロ?」
僕は最後の大道芸を決意しました。
坂本九さんの「上を向いて歩こう」を歌いながら恩師に棒でシバかれても一切痛がらない。という大道芸をしている写真。
結果はなんと大成功。
皆さん、最後は大きな声で笑ってくれたのです。その日、患者さんが興奮して寝付きが悪かったという話を後から聞きました。嬉しかったです。
僕の初舞台は最初こそダメでしたが、終わりはいい形で終わることができました。
僕はその夜、もう二度と会うことのない中国人に感謝しました。
「沈沈、・・・・・謝謝。」
本当に長くなりました。最後まで読んでくれた方ありがとうございます。
それでは。また更新します。